個人事業主のバーチャルオフィス活用術!メリット・デメリットと選び方を徹底解説します

個人事業主として独立・開業する際、多くの人が「事業所の住所をどうするか」という問題に直面します。自宅をオフィスとして利用する方も多いですが、「自宅の住所を公開したくない」「ビジネスの信頼性を高めたい」といった悩みも少なくありません。
そのような悩みを解決する選択肢として、近年注目されているのが「バーチャルオフィス」です。バーチャルオフィスは、物理的なオフィススペースを借りることなく、事業用の住所や電話番号などをレンタルできるサービスです。
この記事では、個人事業主がバーチャルオフィスを利用するメリットやデメリット、自分に合ったサービスの選び方を詳しく解説します。開業手続きに関する疑問にもお答えしますので、ぜひ最後までご覧ください。
目次
個人事業主がバーチャルオフィスを利用する5つのメリット

個人事業主がバーチャルオフィスを利用することで、コスト削減やプライバシー保護など、多くのメリットを得られます。ここでは、主な5つのメリットについて具体的に見ていきましょう。
自宅住所を公開せずプライバシーを保護できる
個人事業主として活動する場合、ウェブサイトや名刺に事業所の住所を記載する必要があります。特にネットショップなどを運営する場合、特定商取引法により住所の公開が義務付けられています。自宅住所を公開すると、プライバシーの侵害やセキュリティ面でのリスクが懸念されます。
バーチャルオフィスを利用すれば、自宅の住所を公開することなく、事業用の住所を持つことができます。これにより、ご自身やご家族のプライバシーを守りながら、安心してビジネスに集中できる環境を整えられます。
リスクの種類 | 具体例 | バーチャルオフィスによる対策 |
プライバシー侵害 | 自宅が特定され、ストーカー被害に遭う | 自宅住所を非公開にできる |
営業活動の妨げ | 突然の訪問営業や勧誘 | 事業用の住所に届くため、直接の訪問を避けられる |
家族への影響 | 家族のプライバシーも危険に晒される | 家族の住む場所を知られるリスクがない |
低コストで都心の一等地にオフィスを持てる
ビジネスにおいて、事業所の住所は信頼性を左右する重要な要素です。都心の一等地にある住所は、取引先や顧客に対して良い印象を与え、ビジネスの信頼性向上に繋がります。
しかし、実際に都心にオフィスを構えるとなると、高額な賃料や初期費用がかかります。バーチャルオフィスであれば、月額数千円程度の低コストで、銀座や渋谷、新宿といった都心の一等地の住所を利用することが可能です。 これにより、少ない資金で事業のブランドイメージを高めることができます。
事業の信頼性を高めビジネスチャンスを広げる
前述の通り、都心の一等地の住所は事業の信頼性を高める効果があります。 特に、実績がまだ少ない開業当初の段階では、信頼性の高い住所を持つことが、取引先や金融機関からの評価を高め、ビジネスチャンスを広げる一因となり得ます。
ウェブサイトや名刺に都心の住所が記載されているだけで、しっかりとした事業基盤があるという印象を与えることができ、新規顧客の獲得や取引の成約に繋がりやすくなるでしょう。
開業時の初期費用や月々の固定費を大幅に削減
事業を始めるにあたり、コスト管理は非常に重要です。物理的なオフィスを賃貸する場合、敷金・礼金、保証金といった初期費用に加え、月々の家賃や光熱費、通信費などの固定費が発生します。
バーチャルオフィスを利用すれば、これらの費用を大幅に削減できます。月額数千円からの利用料で事業に必要な住所や電話番号を確保できるため、開業時の初期投資を抑え、浮いた資金を広告宣伝費や商品開発など、事業成長のために有効活用することが可能です。
将来の法人化をスムーズに進められる
個人事業主として事業を開始し、将来的に法人化を検討している方にもバーチャルオフィスはおすすめです。事業所得が一定額を超えると、法人化した方が節税に繋がるケースがあります。
自宅住所で法人登記することも可能ですが、融資を受ける際に不利になったり、プライベートとの区別がつきにくくなったりするデメリットがあります。初めからバーチャルオフィスを利用していれば、住所変更の手間なくスムーズに法人登記の手続きを進めることが可能です。
バーチャルオフィスの基本サービスとは?

バーチャルオフィスでは、住所貸し以外にも事業に役立つ様々なサービスが提供されています。運営会社によって内容は異なりますが、ここでは主な基本サービスをご紹介します。
サービス名 | サービス内容 | こんな人におすすめ |
住所レンタル | 事業用住所の貸し出し | 自宅住所を公開したくない人、信頼性を高めたい人 |
郵便物転送 | 郵便物の受け取りと指定住所への転送 | 外出が多い人、郵便物の管理を効率化したい人 |
電話サービス | 固定電話番号のレンタル、電話代行 | 顧客対応の品質を高めたい人、個人の電話と分けたい人 |
貸し会議室 | 打ち合わせスペースのレンタル | クライアントとの商談が多い人、静かな環境で打ち合わせたい人 |
事業用の住所レンタル
バーチャルオフィスの最も基本的なサービスが、事業用の住所をレンタルすることです。この住所は、名刺やウェブサイトへの記載はもちろん、法人登記にも利用できる場合があります。 これにより、自宅住所を公開することなく、ビジネスの拠点となる住所を持つことが可能です。
郵便物の受取・転送サービス
レンタルした住所宛に届いた郵便物や宅配便を、運営会社が代わりに受け取り、指定した住所(自宅など)へ転送してくれるサービスです。 転送の頻度は週1回や月1回など、プランによって異なります。オプションで即日転送に対応してくれるサービスもあり、重要な書類も確実に受け取ることができます。
固定電話番号の利用と電話代行
事業用の固定電話番号をレンタルできるサービスです。 スマートフォンに転送設定をすることで、外出先でも会社の電話に対応できます。また、オプションでオペレーターが社名で電話応対してくれる「電話秘書代行サービス」を利用すれば、一人で事業を運営していても、まるで事務員がいるかのような体制を整えることができ、顧客からの信頼度も向上します。
貸し会議室の利用
多くのバーチャルオフィスでは、打ち合わせや商談に利用できる貸し会議室が併設されています。 自宅にクライアントを招くことなく、プライバシーが守られた静かな環境で、プロフェッショナルな雰囲気の中、大切な商談を進めることが可能です。利用料金は都度払いや月額プランに含まれているなど、運営会社によって異なります。
個人事業主がバーチャルオフィスを選ぶ際の5つのポイント

バーチャルオフィスは数多く存在するため、どのサービスを選べば良いか迷ってしまうかもしれません。ここでは、自分に合ったバーチャルオフィスを選ぶための5つのポイントを解説します。
1)法人登記に対応しているか確認する
将来的に法人化を考えている場合は、必ず「法人登記可能」なバーチャルオフィスを選びましょう。 すべてのバーチャルオフィスが法人登記に対応しているわけではありません。ウェブサイトなどで事前に確認することが重要です。法人登記に対応していないサービスを選んでしまうと、法人化の際に再度住所を探し、移転登記を行う手間と費用が発生してしまいます。
2)予算に合った料金プランを選ぶ
バーチャルオフィスの料金は、月額数百円の格安プランから、サービスが充実した数万円のプランまで幅広く存在します。 住所レンタルのみで良いのか、郵便物転送や電話サービスも必要なのかなど、自分の事業に必要なサービスを洗い出し、予算内で最適なプランを選びましょう。不要なオプションは付けず、コストパフォーマンスを重視することが大切です。
3)必要なサービスが充実しているか見極める
料金だけでなく、サービス内容もしっかり比較検討しましょう。例えば、郵便物転送の頻度は週1回で十分か、貸し会議室は必要か、電話代行はどのレベルまで対応してくれるのかなど、具体的な利用シーンを想定して確認することが重要です。 自分のビジネススタイルに合ったサービスを提供している運営会社を選びましょう。
4)運営会社の信頼性と実績をチェックする
残念ながら、バーチャルオフィス業界には経営が不安定で、突然サービスを停止してしまう事業者も存在します。 契約したバーチャルオフィスが倒産すると、住所変更の手続きなど、多大な手間とコストがかかります。運営会社の運営歴が長いか、利用者の口コミや評判は良いかなどを事前に調査し、信頼できる運営会社を選ぶことが安心して事業を続けるための鍵です。
5)郵便物の取り扱い方法を確認する
郵便物の取り扱いは、日々の業務効率に大きく影響します。郵便物が到着した際、メールなどで通知してくれるのか、転送の依頼方法は簡単か、オプションで即日転送や直接引き取りが可能かなど、細かい点まで確認しておきましょう。 ストレスなく郵便物を管理できるシステムが整っているかどうかも、重要な選択基準の一つです。
契約前に知っておきたいバーチャルオフィスの注意点

メリットの多いバーチャルオフィスですが、契約前に知っておくべき注意点も存在します。後で「知らなかった」と後悔しないために、デメリットもしっかりと理解しておきましょう。
業種によっては利用できない場合がある
バーチャルオフィスは、開業にあたって許認可が必要な一部の業種では利用が認められていません。 例えば、弁護士・税理士などの士業や、人材紹介業、探偵業、建設業、古物商などは、事業を行うための独立した物理的なスペースが法律で義務付けられているため、バーチャルオフィスの住所では開業できない場合があります。ご自身の事業が該当するかどうか、事前に管轄の行政機関に確認が必要です。
郵便物の受け取りにタイムラグが発生する
バーチャルオフィスに届いた郵便物は、一度運営会社が受け取り、その後指定の住所へ転送されるため、直接自宅に届く場合に比べて受け取りまでにタイムラグが生じます。 重要な契約書や請求書など、急ぎで確認が必要な書類がある場合には注意が必要です。即日転送などのオプションサービスを活用するか、緊急性の高い書類は別の方法で受け取るなどの工夫が求められます。
他の利用者と住所が重複する
バーチャルオフィスは、一つの住所を複数の利用者で共有するサービスです。そのため、インターネットで住所を検索すると、自社だけでなく他の会社の名前も表示される可能性があります。 これにより、顧客や取引先にバーチャルオフィスを利用していることが知られる場合がありますが、近年バーチャルオフィスの利用は一般的になっており、信頼性が大きく損なわれることは少ないと考えられます。
契約期間や解約条件を確認する
契約前には、契約期間の縛りや解約時の条件を必ず確認しましょう。最低利用期間が設けられている場合や、解約時に違約金が発生するケースもあります。事業計画に合わせて、柔軟に契約内容を変更できるかどうかもチェックしておくと良いでしょう。
バーチャルオフィス利用時の開業手続きと税務のポイント

バーチャルオフィスを利用して開業する場合、特に「開業届」の書き方や「経費計上」について疑問を持つ方が多いようです。ここでは、税務に関する重要なポイントを解説します。
開業届の「納税地」はどこにすべきか?
個人事業主が開業する際は、税務署に「開業届」を提出します。この開業届には「納税地」を記載する欄があり、「住所地」「居所地」「事業所等」から選択します。
バーチャルオフィスは「事業所等」にあたるため、その住所を納税地として届け出ることが可能です。 国税庁によると、個人事業主の納税地は原則として住民票のある「住所地」ですが、事業所の住所を納税地にすることも認められています。 税務署からの重要な書類は納税地に送付されるため、郵便物の管理がしやすいほうを選ぶと良いでしょう。
自宅の家賃や光熱費も経費にするための書き方
バーチャルオフィスを納税地として届け出た場合でも、自宅で仕事をしているのであれば、家賃や光熱費の一部を事業の経費として計上(家事按分)することが可能です。
そのためには、開業届の書き方が重要になります。 例えば、納税地をバーチャルオフィスの住所にした場合、「上記以外の住所・事業所等」の欄に自宅の住所を記載します。逆に、納税地を自宅にした場合は、この欄にバーチャルオフィスの住所を記載します。これにより、両方の場所が事業に関連していることを税務署に示し、それぞれの費用を経費として計上できるようになります。
納税地の選択 | 開業届の記載方法 |
バーチャルオフィスを納税地に | 「納税地」:バーチャルオフィスの住所 「上記以外の住所・事業所等」:自宅の住所 |
自宅を納税地に | 「納税地」:自宅の住所 「上記以外の住所・事業所等」:バーチャルオフィスの住所 |
バーチャルオフィスの利用料は「支払手数料」で経費計上
バーチャルオフィスの月額利用料は、当然ながら事業に必要な経費として計上できます。確定申告の際の勘定科目は、一般的に「支払手数料」として処理します。 「地代家賃」ではない点に注意しましょう。郵便物の転送料金や会議室の利用料など、付帯サービスにかかった費用は、それぞれ「通信費」や「会議費」として計上します。
まとめ
個人事業主にとって、バーチャルオフィスはプライバシー保護、コスト削減、事業の信頼性向上といった多くのメリットをもたらす、非常に有効なツールです。特に、自宅で開業する際の不安を解消し、事業をスムーズにスタートさせたい方におすすめのサービスと言えます。
サービスを選ぶ際は、料金だけでなく、法人登記の可否や提供されるサービス内容、運営会社の信頼性などを総合的に比較検討することが大切です。ご自身の事業内容や将来の展望に合ったバーチャルオフィスを見つけ、ビジネスを成功へと導きましょう。
nexのTHE HUBでは、東京・神奈川・名古屋・京都・大阪など、全国80拠点以上でバーチャルオフィスを展開中。
気になるエリアに拠点があるか、ぜひチェックしてみてください。

writing by:nex株式会社 事業企画室
nexでは、レンタルオフィス・コワーキングスペース・バーチャルオフィスに関する情報を、コラム記事を通じてわかりやすく発信しています。
自社サービスに限らず、これから働き方を見直したい方・新しい拠点を検討している方に役立つ業界情報をお届けしていきます。

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