スタートアップの固定費を削減する方法10選|成長を止めない見直し方

2026年9月5日

スタートアップでは、売上が安定する前から人件費やオフィス賃料、SaaS利用料などの固定費が毎月発生します。固定費が膨らむとバーンレートが高まり、手元資金が尽きるまでの期間である「ランウェイ」が短くなるため、早めの見直しが欠かせません。

ただし、目先の支出だけを減らそうとすると、事業成長に必要な人材やサービスまで削ってしまう可能性があります。大切なのは、費用対効果を確認しながら、成長への影響が小さい固定費から優先的に削減することです。

この記事では、スタートアップが固定費を削減する具体的な方法10選と、見直しの順番、実行時の注意点を解説します。自社だけで固定費の洗い出しや削減方法を判断するのが難しい場合は、まず専門家によるサポート内容をご確認ください。

スタートアップにおすすめ

目次

スタートアップの固定費削減は、契約状況や利用実態を把握しやすく、売上への影響が小さい費用から始めるのが基本です。まずSaaSや継続的な外注費を洗い出し、次にオフィス費用や通信費などを見直しましょう。

単純な削減額だけでなく、毎月の支出であるバーンレートをどれだけ抑え、ランウェイを何カ月延ばせるかで優先順位を決めることが重要です。

優先順位主な固定費確認するポイント見直し方
SaaS・外注費利用頻度、重複、費用対効果解約、プラン変更、契約範囲の縮小
オフィス・通信費稼働率、契約条件、必要性縮小、移転、プラン変更
慎重に判断人件費・広告費売上や成長への貢献度配置や運用方法を改善

まずは利用状況を把握しやすいSaaS・外注費から見直す

最初に確認したいのが、SaaSの利用料と毎月定額で発生している外注費です。契約数や利用履歴を確認しやすく、解約やプラン変更によって比較的早く支出を抑えられます。

SaaSは、使われていないアカウント、機能が重複するツール、必要以上に上位のプランになっていないかを確認します。外注費については、業務内容と成果を整理し、社内対応への切り替えや契約範囲の縮小が可能かを検討しましょう。なお、外注費は契約形態によって変動費にもなりますが、毎月定額の契約は固定費に近い支出として見直せます。

売上や成長への影響が小さい費用を優先する

固定費は、金額が大きいものから削減すればよいとは限りません。営業活動や商品開発に必要な人材、顧客獲得につながっている広告などを安易に削ると、売上の低下や成長の停滞を招く可能性があります。

各費用を「成長に不可欠」「あると望ましい」「利用されていない」の3段階に分類し、利用されていない費用から削減すると判断しやすくなります。成長に必要な費用は残し、成果が不明確な支出を優先して見直すことがポイントです。

削減額だけでなくランウェイへの効果で判断する

ランウェイとは、現在の手元資金で事業を継続できる期間のことです。一般的には「手元資金÷月間のネットバーンレート」で目安を算出できます。

例えば、年間120万円の固定費を削減できれば、毎月の支出は10万円減少します。ただし、削減効果を判断する際は金額だけでなく、解約金や移転費用などの一時的なコストも考慮が必要です。削減後のバーンレートを再計算し、ランウェイがどれだけ延びるかを確認したうえで実行しましょう。

固定費とは、売上や販売数量の増減にかかわらず、毎月継続して発生する費用です。スタートアップでは、人件費やオフィス賃料、SaaS利用料などが代表例です。

固定費が大きいほど、売上が伸びない期間にも多くの資金が流出します。そのため、固定費を把握することは、バーンレートを抑え、事業を継続できる期間を延ばすうえで重要です。

用語意味代表例・計算方法
固定費売上に左右されず継続的に発生する費用人件費、賃料、SaaS利用料
変動費売上や事業活動の量に応じて増減する費用仕入費、販売手数料、配送費
バーンレート一定期間に消費する資金の金額・速度月間支出、または月間支出-月間収入
ランウェイ現在の資金で事業を継続できる期間手元資金÷月間ネットバーンレート

固定費と変動費の違い

固定費と変動費の違いは、売上や販売数量に応じて金額が変わるかどうかです。固定費は売上がゼロでも発生するのに対し、変動費は商品やサービスの販売量に連動して増減します。

ただし、費用区分は事業や契約内容によって異なります。例えば、毎月定額の外注費は固定費として扱えますが、案件数や作業量に応じて支払う外注費は変動費です。SaaSも定額契約なら固定費、利用量に応じた従量課金部分は変動費と考えられます。

スタートアップで発生する主な固定費

スタートアップの主な固定費には、役員報酬や従業員給与などの人件費、オフィス賃料、通信費、SaaS利用料、クラウドサービスの基本料金、保険料、リース料、専門家への顧問料などがあります。

なかでも、人件費やオフィス賃料は金額が大きくなりやすい一方、急な削減が難しい費用です。まずは固定費を一覧化し、「契約金額」「契約期間」「利用状況」「解約条件」を確認すると、見直せる費用を判断しやすくなります。

固定費・バーンレート・ランウェイの関係

バーンレートとは、スタートアップが一定期間に消費する資金の金額や速度を示す指標です。支出総額を示す「グロスバーンレート」と、支出から収入を差し引いた資金減少額を示す「ネットバーンレート」があります。

ランウェイは、手元資金が尽きるまでの期間です。一般的には「手元資金÷月間ネットバーンレート」で計算します。固定費を削減すると月々のバーンレートが下がるため、同じ手元資金でもランウェイを延ばせます。

ただし、固定費削減によって売上や成長率まで低下すると、期待した効果を得られません。削減後はバーンレートとランウェイを定期的に再計算し、事業への影響もあわせて確認することが大切です。

スタートアップが固定費を削減すると、毎月の資金流出を抑え、事業を継続できる期間を延ばせます。さらに、損益分岐点が下がることで黒字化を目指しやすくなり、削減した資金を開発や営業などの成長分野へ振り向けられます。

メリット得られる効果確認する指標
バーンレートの抑制毎月の資金流出が減る月間ネットバーンレート
ランウェイの延長資金調達までの時間を確保できる手元資金、残存月数
損益分岐点の低下少ない売上でも黒字化しやすくなる損益分岐点売上高
資金の再配分成長施策へ投資できる投資額、売上・利益への貢献度

毎月のバーンレートを抑えられる

固定費を削減すると、売上にかかわらず毎月発生する支出が減るため、バーンレートを抑えられます。一度見直せば翌月以降も削減効果が続きやすい点が、単発の経費削減との違いです。

例えば、SaaSやオフィスなどの固定費を月30万円削減した場合、年間では360万円の支出を抑えられます。削減前後の月間支出を比較し、効果が継続しているか定期的に確認しましょう。

資金調達までのランウェイを延ばせる

固定費削減によってネットバーンレートが下がると、現在の手元資金で事業を継続できるランウェイが延びます。資金調達には、投資家との交渉やデューデリジェンスなどで一定の期間が必要です。

十分なランウェイを確保できれば、資金が尽きる直前に不利な条件で調達するリスクを抑えられます。また、市場環境が悪い時期に調達を急がず、事業実績を積み上げてから交渉する余地も生まれます。

損益分岐点を引き下げられる

損益分岐点とは、売上と費用が等しくなり、利益がゼロになる地点です。固定費が下がると、利益を出すために必要な売上高も下がります。

特に売上が安定していない創業期では、高い固定費を抱えるほど赤字が拡大しやすくなります。必要な機能や品質を維持しながら固定費を減らせれば、黒字化までのハードルを下げ、売上変動にも対応しやすい経営体質をつくれます。

成長分野へ資金を再配分できる

固定費削減の目的は、単に支出を減らすことではありません。利用されていないサービスや成果につながっていない契約を見直し、そこで生まれた資金を、プロダクト開発や営業、マーケティングなどの成長分野へ再配分することが重要です。

再配分する際は、施策ごとに目的と評価指標を設定します。削減額だけでなく、振り向けた資金が売上や顧客獲得、継続率の改善につながったかまで確認することで、成長を止めない固定費削減を実現できます。

スタートアップの固定費を削減するには、支出を一覧化し、事業成長への影響が小さく、短期間で効果が出る項目から見直します。SaaSやクラウド、オフィスなど、契約内容や利用状況を数値で確認できる費用から着手すると進めやすいでしょう。

削減方法主な確認ポイント期待できる効果
SaaSの整理・契約変更利用率、重複、アカウント数月額利用料の削減
クラウドの最適化稼働状況、容量、料金プランインフラ費の削減
オフィス・働き方の見直し出社率、必要面積、契約条件賃料や関連費の削減
各種契約の見直し料金、補償内容、契約期間継続支出の削減
人材・業務の最適化業務量、役割、費用対効果人件費や外注費の適正化
広告・業務プロセスの改善成果、工数、自動化の可否支出削減と生産性向上

1)利用していないSaaSを解約・統合する

最初に、社内で契約しているSaaSと利用者を一覧化します。利用実績のないツールや、機能が重複しているツールがあれば、解約または統合を検討しましょう。

管理担当者を決め、契約更新前に利用状況を確認するルールを設けると、不要な契約の再発も防げます。

2)SaaSの契約プランとアカウント数を見直す

継続利用するSaaSでも、契約プランやアカウント数が現在の事業規模に合っているとは限りません。退職者や利用頻度の低い従業員のアカウントが残っていないか確認します。

利用していない機能が多い場合は、下位プランへの変更も選択肢です。ただし、年間契約への変更は割安でも途中解約しにくいため、利用予定を確認して判断しましょう。

3)クラウドサーバーの利用量を最適化する

クラウド費用は、不要なインスタンスやストレージ、過剰なスペックによって膨らむことがあります。リソースごとの稼働状況を可視化し、使われていない環境の停止や適切なサイズへの変更を進めます。

開発環境を利用しない時間帯に停止する方法も有効です。サービスの性能や安定性を損なわないよう、エンジニアと連携して実施しましょう。

4)オフィスの縮小・移転・シェア化を検討する

賃料や管理費は、スタートアップにとって負担が大きくなりやすい固定費です。座席数や出社率、会議室の稼働率を確認し、現在の広さが必要かを判断します。

利用率が低い場合は、より小さな物件への移転や、レンタルオフィス・シェアオフィスへの切り替えが選択肢になります。比較する際は、賃料だけでなく移転費用、設備費、原状回復費も含めて検討しましょう。

5)リモートワークを取り入れて関連費用を抑える

リモートワークを導入し、固定席を減らせれば、必要なオフィス面積を抑えられます。交通費や光熱費などの削減につながる場合もあります。

ただし、制度を導入するだけでは賃料は下がりません。フリーアドレス化やオフィスの縮小、必要なときだけ使えるワークスペースの活用と組み合わせることが重要です。

6)通信費・光熱費・保険料の契約を見直す

インターネット回線や携帯電話、電気、保険などは、契約後に見直されにくい費用です。現在の利用量と契約内容を確認し、不要なオプションの解約やプラン変更を検討します。

保険は料金だけで判断せず、事業上必要な補償を維持できるか確認しましょう。違約金や契約期間も含め、変更後の総額で比較する必要があります。

7)ノンコア業務をアウトソーシングする

経理や労務、総務などのノンコア業務は、必要な範囲だけ外部へ委託することで、固定的な人員配置を抑えられる場合があります。社内の人材を、開発や営業などのコア業務に集中させられる点もメリットです。

一方、委託量によっては内製より高くなる可能性があります。委託料金だけでなく、社内で対応した場合の人件費や管理工数を含めて比較しましょう。

8)採用計画と人員配置を見直す

人件費は金額が大きいものの、安易な削減は事業成長や組織運営に影響します。まず採用計画と事業計画を照らし合わせ、採用時期や必要な職種、人数を見直しましょう。

既存メンバーの役割や業務量を可視化し、配置転換や業務改善で対応できないか検討します。短期的な削減額ではなく、売上や開発計画への影響を踏まえた判断が必要です。

9)広告・マーケティング施策を費用対効果で選別する

毎月一定額を投じている広告やマーケティング施策も、固定的な支出として見直します。施策ごとに顧客獲得単価や商談数、売上への貢献度を確認しましょう。

成果が不明確な施策は停止または予算を縮小し、効果の高い施策へ再配分します。将来の売上まで減らさないよう、短期的な成果だけで判断しないことも大切です。

10)業務の自動化・ペーパーレス化を進める

請求書の発行、経費精算、勤怠管理などの定型業務を自動化すると、作業時間や残業代を削減できます。契約書や申請書の電子化は、印刷費や郵送費、保管スペースの削減にもつながります。

導入前には、削減できる工数とツールの利用料を比較しましょう。処理件数が多く、繰り返し発生する業務から自動化すると、費用対効果を高めやすくなります。

オフィス費用を見直すなら、家具・インターネット環境が整い、事業規模や働き方に合わせて利用方法を選べる「THE HUB」も選択肢です。固定費を抑えながら必要な仕事環境を確保したい方は、プランや利用可能な拠点をご確認ください。

スタートアップにおすすめ

固定費削減は、支出を見つけ次第カットするのではなく、全体像を把握してから優先順位を決めることが重要です。以下の5つのステップで進めると、事業への悪影響を抑えながら継続的にコストを最適化できます。

ステップ実施すること主な成果物
1固定費をすべて洗い出す固定費一覧
2契約内容と利用状況を調べる契約・利用状況表
3削減効果と事業への影響を比較する評価表
4優先順位に沿って実行する実行計画
5KPIを毎月確認するモニタリング表

ステップ1|固定費を費目別に洗い出す

まず、会計データや銀行口座、クレジットカードの明細を確認し、毎月または定期的に発生している支出を洗い出します。

人件費、オフィス費、SaaS・IT費、通信費、保険料、顧問料など、費目別に整理しましょう。部署ごとに契約しているサービスもあるため、経理データだけでなく各部門への確認も必要です。

ステップ2|契約額・利用率・解約条件を確認する

洗い出した固定費ごとに、月額・年額の契約額、利用者数、利用頻度、契約期間を記録します。契約更新日や解約期限、違約金の有無も確認してください。

SaaSであればアクティブユーザー数、オフィスであれば座席や会議室の稼働率など、実際の利用状況を数値化します。契約額と利用率を並べると、優先して見直すべき費用が見つかりやすくなります。

ステップ3|事業への影響と削減効果を比較する

各費用について、削減できる金額と、削減した場合に事業へ与える影響を比較します。削減効果は、月額だけでなく年間の金額に換算すると判断しやすくなります。

あわせて、売上、顧客満足度、業務効率、情報セキュリティなどへの影響を確認しましょう。削減額が大きくても、解約金や移転費用が高い場合は、効果が出るまでの期間も考慮する必要があります。

ステップ4|優先順位を決めて削減を実行する

「削減効果が大きく、事業への影響が小さい費用」から優先して実行します。未利用のSaaSや余分なアカウント、不要なオプションなどは、比較的取り組みやすい項目です。

一方、人件費や主要な開発ツールなど、事業の中核に関わる費用は慎重に判断します。担当者、実施期限、想定削減額を決め、契約更新のタイミングも踏まえて進めましょう。

ステップ5|KPIを設定して毎月モニタリングする

固定費削減は、一度実施して終わりではありません。固定費総額、月間ネットバーンレート、ランウェイ、SaaSの利用率などをKPIとして設定し、毎月確認します。

計画した削減額と実績に差がある場合は、原因を特定して次の施策へ反映します。新しい契約にも承認ルールを設け、固定費が再び膨らまない仕組みをつくることが重要です。

固定費削減の効果は、削減額だけでなく、バーンレートやランウェイ、損益分岐点売上高の変化まで確認することが重要です。施策の実行前後で同じ指標を計算すると、資金繰りと収益性がどの程度改善したかを判断できます。

指標計算式確認できること
月間固定費の削減率(削減前-削減後)÷削減前×100固定費を削減できた割合
バーンレートの改善額改善前のバーンレート-改善後のバーンレート毎月減らせた資金流出額
ランウェイ手元資金÷月間ネットバーンレート事業を継続できる月数
損益分岐点売上高固定費÷限界利益率黒字化に必要な売上高

月間固定費の削減率

月間固定費の削減率は、次の式で計算します。

月間固定費の削減率=(削減前の月間固定費-削減後の月間固定費)÷削減前の月間固定費×100

例えば、月間固定費を500万円から450万円へ減らした場合、削減率は10%です。費目別にも削減率を計算すると、どの施策の効果が大きかったかを把握できます。

バーンレートの改善額

バーンレートの改善額は、施策の実行前後における月間の資金流出額を比較して求めます。

改善額=改善前の月間ネットバーンレート-改善後の月間ネットバーンレート

月間収入などの条件が変わらなければ、固定費を月50万円削減すると、ネットバーンレートも原則として月50万円改善します。ただし、一時的な解約金や移転費用が発生する場合は、それらを含めた実際のキャッシュフローでも確認しましょう。

ランウェイが何カ月延びるか

ランウェイは、手元資金を月間ネットバーンレートで割って計算します。削減前後のランウェイの差が、固定費削減によって延びた期間です。

延長月数=削減後のランウェイ-削減前のランウェイ

例えば、手元資金が3,000万円、月間ネットバーンレートが200万円なら、削減前のランウェイは15カ月です。固定費削減によってネットバーンレートが150万円になれば、ランウェイは20カ月となり、5カ月延長できます。

なお、ネットバーンレートがゼロ以下になった場合は手元資金が減少しないため、この式によるランウェイの算出は不要です。

損益分岐点売上高への影響

損益分岐点売上高とは、売上高と費用が等しくなり、利益がゼロになる売上高です。次の式で計算できます。

損益分岐点売上高=固定費÷限界利益率
限界利益率=1-変動費率

例えば、固定費が月500万円、変動費率が40%の場合、損益分岐点売上高は約833万円です。固定費を450万円に削減すると750万円となり、黒字化に必要な月間売上高を約83万円引き下げられます。

計算後は売上や変動費の実績も更新し、固定費削減が資金繰りと収益性の両方にどのような効果を与えたか確認しましょう。

スタートアップの固定費削減では、支出を減らすこと自体を目的にしないことが重要です。短期的にコストが下がっても、売上や開発速度、生産性、信用を損なえば、結果的により大きな損失につながります。

削減額だけでなく、事業への影響や一時コスト、将来の成長機会まで含めて判断しましょう。

注意点想定されるリスク判断するときのポイント
成長費用の削減売上・開発速度の低下事業計画への貢献度
一律の予算削減必要な施策まで縮小投資対効果
一時コストの見落とし想定より資金が減る回収期間と総コスト
職場環境の悪化生産性・定着率の低下従業員への影響
セキュリティ費用の削減情報漏えい・信用低下リスクと必要要件

開発・営業など成長に直結する費用を安易に削らない

プロダクト開発や営業活動に必要な費用を削りすぎると、リリースの遅れや商談数の減少を招く可能性があります。短期的にバーンレートが下がっても、売上の伸びまで止まれば、ランウェイの改善につながらないことがあります。

各費用が売上、顧客獲得、継続率、開発計画にどう貢献しているかを確認し、成長への影響が小さいものから見直しましょう。

一律削減ではなく投資対効果で判断する

すべての部門の予算を同じ割合で削減すると、成果を上げている施策まで縮小してしまいます。費用の金額だけでなく、得られた売上や削減できた工数などを基準に、施策ごとの投資対効果を比較することが重要です。

成果の高い施策は維持または強化し、利用されていない契約や効果が不明確な施策を優先して削減します。効果を数値化しにくい場合は、一定期間の縮小や試験停止で影響を確認する方法もあります。

解約違約金や移転費用などの一時コストを確認する

契約を解約・変更する際には、違約金や原状回復費、移転費用、データ移行費などが発生する場合があります。月額費用が下がっても、一時コストが大きければ、短期的にはキャッシュフローが悪化します。

「一時コスト÷毎月の削減額」で、削減にかかった費用を回収できるまでの期間を確認しましょう。契約更新の時期に合わせて実行すると、一時コストを抑えられる可能性があります。

従業員の生産性やエンゲージメントを損なわない

業務ツールやオフィス設備、福利厚生などを削減すると、従業員の作業効率や働きやすさに影響することがあります。現場の意見を確認せずに進めると、業務時間の増加やモチベーションの低下につながりかねません。

削減前に利用状況や必要性をヒアリングし、代替手段を用意しましょう。実施後も業務時間、残業時間、離職率などを確認し、悪影響が見られた場合は見直す必要があります。

セキュリティや法令対応に必要な費用は維持する

セキュリティ対策やデータ管理、法令・契約上必要な業務に関する費用は、安易に削減すべきではありません。対策が不十分になると、情報漏えいやシステム停止、取引先からの信用低下などにつながる可能性があります。

費用を見直す場合も、必要な安全性や管理体制を維持できることが前提です。料金だけでサービスを選ばず、機能、サポート体制、事業上のリスクを比較したうえで判断しましょう。

固定費は、「削減してよい費用」と「残すべき費用」を一律に分類できるものではありません。利用状況、事業フェーズ、売上への貢献度によって判断が変わります。

基本的には、使われていない費用から優先して削減し、成長や信用、安全性に直結する費用は慎重に判断しましょう。

分類固定費の例判断基準
優先的に見直しやすい未利用のSaaS、余分なアカウント、不要なオプション利用実績があるか
事業フェーズで判断オフィス、採用、広告、外注費現在の事業計画に必要か
削減を避けるべきセキュリティ、法令対応、主要な開発・営業費事業継続や信用を損なわないか

優先的に見直しやすい固定費

優先的に見直しやすいのは、利用されていない、または同じ機能に対して重複して支払っている固定費です。未利用のSaaS、退職者のアカウント、過剰な契約プラン、不要なオプションなどが該当します。

使用していない座席や機器のリース、成果が確認できない定額サービスなども見直しの対象です。まずは解約や契約数の削減を検討し、継続して必要なものはプラン変更や他サービスへの統合を進めましょう。

事業フェーズによって判断が分かれる固定費

オフィス、人件費、採用費、広告費、外注費などは、事業フェーズによって必要性が変わります。創業初期には負担となるオフィス費用も、人員が増えた段階では採用やコミュニケーションのために必要になることがあります。

反対に、事業方針の転換後も以前の体制や施策に対する支出が残っている場合は、見直す余地があります。現在の売上だけでなく、今後の採用計画や開発計画、資金調達の見通しも踏まえて判断しましょう。

削減を避けるべき固定費

事業継続や顧客からの信用に直結する固定費は、原則として削減を避けるべきです。セキュリティ対策、データのバックアップ、法令・契約への対応、会計・労務管理などに必要な費用が該当します。

主要なプロダクトの開発や、再現性のある顧客獲得につながっている営業・マーケティング費用も、安易に削減すべきではありません。見直す場合は、必要な機能や品質を維持できる代替策を用意し、削減によって生じるリスクが許容できるかを確認しましょう。

Q.固定費は売上に対して何%が適正?

固定費に一律の適正割合はありません。業種、粗利率、事業フェーズ、成長戦略によって必要な固定費が異なるためです。

固定費率は「固定費÷売上高×100」で計算できます。単月の数値だけで判断せず、過去の推移や事業計画と比較し、売上が計画を下回った場合でも資金を維持できる水準か確認しましょう。

Q.固定費はどの費目から削減すべき?

利用されていない、機能が重複している、事業への影響が小さい費用から削減します。具体的には、未利用のSaaSアカウントや不要なオプション、利用率の低い定額サービスなどです。

金額が大きいという理由だけで、人件費や開発費を最初に削ることは避けましょう。削減効果と事業への影響を比較して優先順位を決めることが重要です。

Q.人件費を削減する前にできることは?

採用計画の見直し、欠員補充の必要性の検討、適切な人員配置、業務の自動化などが挙げられます。残業が多い場合は、業務フローや会議、承認作業に無駄がないかも確認しましょう。

ノンコア業務は外注も選択肢ですが、必ずしも費用が下がるとは限りません。社内で対応する場合の人件費や工数を含め、総コストで比較する必要があります。

Q.SaaSのコストはどのくらいの頻度で見直す?

アカウント数や月額費用は毎月確認し、契約の必要性は四半期ごとに精査するのが目安です。年間契約の場合は、更新日の1〜2カ月前にも見直しましょう。

入退社や組織変更のタイミングでアカウントを整理する仕組みを設けると、利用されていないライセンスへの支払いを防ぎやすくなります。

Q.固定費を変動費化するメリットとデメリットは?

メリットは、売上や業務量に応じて支出を調整しやすくなることです。外注や従量課金サービス、必要なときだけ利用するワークスペースなどを活用すれば、事業規模の変化に柔軟に対応できます。

一方、利用量が増えると固定契約より総額が高くなる場合があります。外部サービスへの依存や品質管理の難しさもあるため、利用量ごとの費用を試算して判断しましょう。

Q.固定費削減でランウェイはどのように計算する?

ランウェイは「手元資金÷月間ネットバーンレート」で計算します。月間ネットバーンレートは、毎月の支出から収入を差し引いた資金減少額です。

例えば、手元資金が3,000万円で月間ネットバーンレートが200万円なら、ランウェイは15カ月です。固定費削減後のネットバーンレートが150万円になれば20カ月となり、ランウェイは5カ月延びます。

スタートアップの固定費削減では、単に支出を減らすのではなく、事業成長への影響が小さい費用から優先的に見直すことが重要です。まずはSaaSや継続的な外注費など、利用状況を把握しやすい項目から着手しましょう。

固定費削減のポイント実施すること
支出を可視化する固定費を費目・契約ごとに一覧化する
優先順位を決める削減効果と事業への影響を比較する
効果を測定するバーンレートとランウェイを確認する
成長へつなげる削減した資金を開発や営業へ再配分する
継続的に改善するKPIを設定して毎月見直す

特に、人件費や開発費などを安易に削ると、売上や成長速度の低下につながる可能性があります。削減額だけでなく、ランウェイや損益分岐点への効果、一時コストも含めて判断することが大切です。

オフィス賃料や設備費を見直したい場合は、レンタルオフィスやシェアオフィスへの切り替えも選択肢です。事業規模に合った働き方とオフィス環境を整えたい方は、「THE HUB」のプランや拠点をご確認ください。

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writing by:nex株式会社 事業企画室

nexでは、レンタルオフィス・コワーキングスペース・バーチャルオフィスに関する情報を、コラム記事を通じてわかりやすく発信しています。
自社サービスに限らず、これから働き方を見直したい方・新しい拠点を検討している方に役立つ業界情報をお届けしていきます。

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