レンタルオフィスで法人登記は可能?手続きの流れと注意点を徹底解説

「自宅住所は使いたくないけれど、コストはできるだけ抑えたい」──そんな悩みを抱える方にとって、レンタルオフィスでの法人登記は、有力な選択肢のひとつです。

実際、「レンタルオフィスで法人登記はできるのだろうか?」と疑問に思っている方も多いのではないでしょうか。結論から言えば、レンタルオフィスの住所で法人登記を行うことは可能です。しかも、コストを抑えつつ、都心の一等地にオフィスを構えることができるため、スタートアップ企業や個人事業主にとって非常に魅力的な手段となっています。

とはいえ、手軽に見える分、契約や運用において注意すべき点も存在します。

本記事では、レンタルオフィスで法人登記を行う際のメリット・注意点、手続きの流れや失敗しない選び方まで、実務に役立つ情報を網羅的に解説します。

目次

レンタルオフィスでの法人登記は可能

まず、最も重要な点として、レンタルオフィスを本店所在地として法人登記することは法的に認められています。起業や法人化を検討している方にとって、これは大きな安心材料です。

法律上は問題なく登記できる

現在の日本の法律では、会社の登記場所に関する規定はありますが、その場所がレンタルオフィスであることを禁じる条文はありません。会社の住所(本店所在地)として、レンタルオフィスの住所を法務局に届け出て、登記簿に記載することは全く問題ありません。物理的なオフィススペースが存在し、事業活動の拠点として機能していれば、登記上の要件を満たすことができます

ただし、契約前に登記の可否を確認することが必須

法律上は問題ありませんが、すべてのレンタルオフィスで法人登記が許可されているわけではない点に注意が必要です。レンタルオフィスの運営会社によっては、利用規約で「法人登記不可」と定めている場合があります

特に、住所貸しがメインの格安プランや、コワーキングスペースのフリーアドレスプランなどでは、登記が認められないケースが見られます。法人登記を目的としてレンタルオフィスを契約する際は、必ず事前に運営会社へ「法人登記に住所を利用できるか」を確認しましょう。

レンタルオフィスで法人登記する5つのメリット

法人登記にレンタルオフィスを利用することは、特にスタートアップやスモールビジネスにとって多くの利点があります。コスト削減から信頼性の向上まで、具体的なメリットを5つ紹介します。

メリット1:初期費用とランニングコストを大幅に削減

一般的な賃貸オフィスを契約する場合、保証金(敷金)、礼金、仲介手数料、内装工事費など、高額な初期費用が発生します。一方、レンタルオフィスではこれらの費用が不要な場合がほとんどです。月々の利用料も、賃貸オフィスに比べて安価に設定されています。これにより、事業の立ち上げフェーズで最も重要な運転資金を手元に残すことができます。

項目賃貸オフィス(小規模)レンタルオフィス
保証金(敷金)数十万~百万円以上不要または少額
礼金家賃の1~2か月分不要
仲介手数料家賃の1か月分不要
内装工事費数十万円以上不要
月額費用高額比較的安価

メリット2:都心の一等地の住所で社会的信用度が向上

レンタルオフィスは、都心やビジネス一等地といった、一般的には賃料が高額なエリアに立地していることが多くあります。法人登記を行うことで、その一等地の住所を自社の公式な住所として名刺やウェブサイトに記載可能です。これにより、信頼感のある住所で、取引先や銀行の印象アップにつながります。

メリット3:プライバシーを守り、自宅住所の公開を回避

自宅で事業を行う場合、法人登記をすると自宅の住所が登記簿に記載され、誰でも閲覧できる状態になります。特に女性の起業家や、プライベートとビジネスを明確に分けたい方にとって、自宅住所の公開は大きな懸念点です。レンタルオフィスで登記すれば、プライバシーを保護し、セキュリティ面での不安を解消できます。

メリット4:事業に必要な設備やサービスが充実

多くのレンタルオフィスでは、デスクや椅子といったオフィス家具はもちろん、高速インターネット回線、複合機、会議室、郵便物受取代行サービスなどが標準で提供されています。これらを自前で用意する必要がないため、手間とコストを削減し、すぐに事業を開始できる環境が整っています。

メリット5:法人化による節税効果が期待できる

個人事業主から法人化(法人成り)する場合、レンタルオフィスの利用料は全額経費として計上できます。法人税は所得が増えても税率が一定なのに対し、個人事業主の所得税は累進課税で所得が増えるほど税率が高くなります。そのため、事業の利益が一定額を超えると、法人化した方が税負担を軽減できる可能性があります。

レンタルオフィスで法人登記する際の注意点

多くのメリットがある一方で、レンタルオフィスでの法人登記にはいくつかの注意点やデメリットも存在します。契約後に後悔しないよう、事前にリスクを理解しておくことが重要です。 

銀行口座の開設が難しくなるケースがある

法人名義の銀行口座を開設する際、金融機関によっては審査が厳しくなることがあります。特に、複数の企業が同じ住所を共有するレンタルオフィスやバーチャルオフィスは、過去に犯罪に利用されたケースがあるため、金融機関が慎重になる傾向があります。メガバンクなどでは断られる可能性もゼロではありません。対策として、ネット銀行や、レンタルオフィスの利用実績に理解のある金融機関を選ぶなどの工夫が必要です。

融資や許認可の取得に影響が出る可能性がある

日本政策金融公庫などからの融資を申し込む際や、特定の事業(建設業、古物商、士業など)に必要な許認可を申請する際に、独立したオフィススペースが要件となっている場合があります。レンタルオフィスでは、この「独立性」の要件を満たせないと判断され、審査に通らない可能性があります。融資や許認可を予定している場合は、事前に管轄の行政機関や金融機関に、レンタルオフィスでの登記が可能かを確認することが不可欠です。

既に同一の商号が登記されている場合がある

商業登記法では、同一の住所に同一の商号(会社名)で登記することは認められていません。 多くの企業が入居する大規模なレンタルオフィスでは、自社が希望する商号が既に登記されている可能性があります。事前に法務局のオンラインサービスなどを利用して、希望する商号が利用可能かを確認する必要があります。

運営会社の倒産により住所変更のリスクがある

万が一、レンタルオフィスの運営会社が倒産したり、事業を撤退したりした場合、その住所を使い続けることはできなくなります。その際は、本店移転の登記手続きを行わなければならず、登録免許税として3万円(管轄内移転)または6万円(管轄外移転)の費用と手間が発生します。契約前には、運営会社の経営状況や実績も確認し、安定した企業が運営するオフィスを選ぶことが重要です。

法人登記が可能なレンタルオフィスの選び方

自社の事業を成功に導くためには、どのレンタルオフィスを選ぶかが非常に重要です。ここでは、法人登記を前提としたレンタルオフィスの選び方のポイントを3つ解説します。

1)登記サービスの有無と追加料金を確認する

まず最も重要なのが、法人登記がプランに含まれているか、また追加料金が必要かどうかを確認することです。基本料金とは別に「法人登記オプション」として月額数千円の費用がかかる場合があります。郵便物の受け取りや転送、電話応対などのサービス内容と合わせて、トータルのコストパフォーマンスを比較検討しましょう。

確認事項チェックポイント
法人登記プラン内で可能か、オプション料金はいくらか
郵便物対応受け取り、保管、転送の頻度と料金
電話サービス専用番号の有無、電話秘書代行の料金
会議室利用利用料金、予約のしやすさ、利用可能時間

2)事業内容に合った立地と設備を選ぶ

自社の事業内容や働き方に合ったオフィスを選びましょう。例えば、クライアントとの打ち合わせが多い事業であれば、交通の便が良く、上質な会議室を備えたオフィスが適しています。一方、作業に集中したいクリエイターであれば、静かで快適な個室スペースが確保できるかどうかが重要になります。

3)運営会社の信頼性を見極める

前述の通り、運営会社の倒産は大きなリスクです。企業のウェブサイトで設立年や事業実績、資本金などを確認し、経営が安定しているかを見極めましょう。長年の運営実績がある企業や、上場企業の子会社などが運営するレンタルオフィスは、信頼性が高いと言えます。口コミサイトや評判をチェックするのも有効な手段です。

THE HUBでは、法人登記可能なレンタルオフィスを、東京・大阪・名古屋を中心に全国80拠点以上でご案内しています。初期費用を抑えたい方や、登記住所に信頼性を求める方に最適なプランをご用意しています。

レンタルオフィスで行う法人登記の具体的な手順

ここでは、実際にレンタルオフィスを契約してから法人登記を完了するまでの基本的な流れを5つのステップで解説します。

【手順1】法人登記可能なレンタルオフィスを契約する

まずは、これまでのポイントを踏まえて自社に最適なレンタルオフィスを選び、契約します。契約時には、法人登記に住所を使用することの承諾を書面で得ておくと、後の手続きがスムーズに進みます。

【手順2】会社の基本事項を決定し、必要書類を準備する

次に、法人登記に必要な基本事項を決定します。商号(会社名)、事業目的、本店所在地(レンタルオフィスの住所)、資本金の額、役員構成などを決めます。並行して、発起人や役員個人の印鑑証明書など、登記申請に必要な書類の準備を進めます。

【手順3】定款の作成と認証を行う

会社の根本規則である「定款」を作成します。定款には、決定した会社の基本事項を記載します。株式会社を設立する場合、作成した定款は公証役場に持ち込み、公証人による認証を受ける必要があります。

【手順4】資本金を払い込む

定款の認証後、発起人の個人口座に資本金を払い込みます。この時、通帳のコピーが資本金の払い込みを証明する書類となるため、大切に保管してください。

【手順5】法務局へ登記申請を行う

すべての書類が揃ったら、本店所在地を管轄する法務局に登記申請書類を提出します。申請方法には、窓口持参、郵送、オンライン申請(G-BizIDが必要)があります。申請後、1週間から10日ほどで登記が完了し、会社の登記簿謄本(履歴事項全部証明書)が取得できるようになります。

レンタルオフィスの法人登記に関するよくある質問

最後に、レンタルオフィスの法人登記に関して多くの方が抱く疑問についてお答えします。

バーチャルオフィスとの違いはなんですか?

レンタルオフィスが物理的なワークスペースを提供するのに対し、バーチャルオフィスは住所や電話番号といった機能のみを貸し出すサービスです。バーチャルオフィスは月額料金が非常に安いですが、作業スペースがないため、許認可が必要な事業や、銀行口座開設の審査で不利になる可能性がレンタルオフィスよりも高くなります。

登記後に住所変更はできますか?

はい、可能です。事業の成長に合わせて別のオフィスに移転する場合など、本店所在地を変更した際は、法務局で本店移転の登記手続きを行う必要があります。この手続きには、登録免許税(管轄内移転で3万円、管轄外移転で6万円)がかかります。

料金の相場はどのくらいですか?

レンタルオフィスの料金は、立地や個室の有無、提供されるサービスによって大きく異なります。法人登記が可能なプランの相場としては、月額2万円〜10万円程度が一般的です。都心の一等地の個室プランになると、さらに高額になる傾向があります。

まとめ

レンタルオフィスを活用した法人登記は、コストを抑えながら事業をスタートさせたい起業家にとって、非常に有効な選択肢です。都心の一等地に登記住所を構えられることで、社会的信用の向上にもつながります。
ただし、銀行口座の開設や許認可の取得など、事前に確認すべき注意点もあるため、契約前には慎重な情報収集が欠かせません。加えて、レンタルオフィスは内覧を通じて実際の設備や周辺環境を確認してから判断することが大切です。

本記事でご紹介したメリットと注意点を踏まえ、自社の事業内容や将来の展望に合ったオフィスを選ぶことが、ビジネス成功への第一歩となります。
なお、THE HUBでは、法人登記が可能なレンタルオフィスを東京・大阪・名古屋を中心に、全国80拠点以上でご案内しています。

初期費用を抑えたい方や、信頼性のある登記住所をお探しの方に最適なプランをご用意していますので、ぜひお気軽にご相談ください。

writing by:nex株式会社 事業企画室

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